「きれいにする行為は、空間・身体をリセットして新たな未来を迎えるきっかけになる」という日本における普遍的意識を確認

花王株式会社(社長・澤田道隆)感覚科学研究所は、国立歴史民俗博物館(館長・久留島浩、千葉県佐倉市)との共同研究で、日本人の「きれいにする行為」(=身体・空間の洗浄、片付け、整理整頓)や清潔な状態に対する意識について、民俗学や歴史学的なアプローチから考察を行ないました。これにより、清潔に対する意識は戦後の高度経済成長期の衛生環境の改善と洗浄行為の習慣化で大きく変化したことがわかりました。一方、「きれいにする行為」は、時代を問わず一貫して、空間や身体をリセットして新たな未来を迎えるきっかけになると信じられてきたことを確認しました。たとえば、江戸時代の年末のすす払いは、新年の年神様を迎える「信仰的儀礼」でしたが(図1)、これは現在も、過去の汚れを拭って新年を迎える年末の大掃除として継承されています。
今回の研究成果は「日本民俗学会第71回年会」(2019年10月12~13日、茨城県つくば市)にて発表しました。


「国立歴史民俗博物館所蔵」

江戸時代の大奥の、年末のすす払いの様子を描いた浮世絵。「きれいにする行為」は、空間や身体をリセットして新たな未来を迎えるきかっけになると信じられていたことの一例

花王は、「清潔な国民は栄える」をモットーにしていたことにも表れているように、1890年に花王石鹸を発売して以来130年間、洗浄製品の開発と提供を通じて清浄文化の発展に貢献したいと考えてきました。

一方、近年ではサステナビリティへの関心が高まり、清浄文化に関連が深い環境や公衆衛生などが社会的課題として議論されるようになっています。このような時代における清浄文化の発展について考えるため、人々の清潔に対する意識・洗浄の意味が時代によってどう変化したかをあらためて検討することを目的に、花王は2017年から国立歴史民俗博物館と共同で民俗学・歴史学を中心とした研究を開始しました。

清潔に対する行為や意識は高度経済成長期に大きく変化しましたが、普遍的なものはないかという観点での検討も行ないました。その結果、「きれいにする行為」は古今を通じて、単に汚れを落とすだけではなく、空間や身体をリセットして新たな未来を迎えるきっかけになると信じられてきたことを確認しました。

たとえば、江戸時代の年末のすす払いは、新年の年神様を迎える信仰的儀礼でした(図1)。これは現在も、過去の汚れや災厄を拭い去って新年の多幸を迎える準備をする年末の大掃除として継承されています。また、江戸時代に将軍に謁見する外国の要人が江戸を訪れる際は、町人が通り道を清めてもてなしの意を示しました。これは現在も、お客様を迎えるときの玄関の門掃きとして継承されています。さらに、禅僧が心を整える修行の一環として古くから行なってきた寺の清掃は、断捨離などの心理状態の調律を伴う整頓術に受け継がれています。

これらに見られる、空間や身体をリセットすることが新たな未来を迎えるきっかけになるという意識は、民俗学における「ケガレ※2を祓う」意識が一般の人々の生活に現れたものと解釈することもできます。
※2 ケガレ:民俗学では、不潔で危険で強い感染力をもつ死の力。「祓え」という信仰的儀礼でのみ解消することができ、その結果縁起物や生命力に逆転すると考えられている。